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はじめに噛めない入れ歯には理由がある
人生の楽しみは人によって違いますが、「食べること」を楽しみの一つに挙げる方は多いのではないでしょうか。
お寿司の繊細な味わいや、肉汁したたるようなステーキ、汗をかきながら食べる激辛カレー、口の中でふわーっととけるショートケーキなど、食べるということは食欲を満たすだけでなく満腹中枢が刺激され幸せを感じる瞬間でもあります。
ところが、歯を失って思うように食べることができなくなったらどうでしょう。
寂しいこと、この上ありません。
死ぬまで自分の歯で食事ができたら、いうことはありません。
しかし残念ながら、現在五五歳以上の日本人の約四〇〇万人が総義歯(総入れ歯)だといわれています。
自分の歯をほとんどすべて失ったために、自分の歯の代わりとして総義歯を入れている方がこれほどたくさんいるのです。
総義歯は失われてしまった自分の歯の代わりとして作られているのですが、総義歯のせいでかえって満足に食事がとれなくなっている方がどれほどいらっしゃることでしょう。
食事のとき、わざわざ入れ歯を外して食べている人が大勢いらっしゃることを見てもそれがわかります。
最近はチタンという金属のネジを歯の根の代わりに骨に埋めて、その上に人工歯を被せるインプラントという技術が普及して、総義歯の代わりにインプラントにしている方もいます。
インプラントは一九五九年、スウェーデンの整形外科医のブローネマルク博士が、チタンには、骨にしっかりとくっついて離れなくなるという特性があることを発見したことから臨床現場での研究が始まりました。
生体にしっかりくっつく特性を、オッセオインテグレーションといいます。
これは、骨折や骨の変形など整形外科分野での応用も進んでいますが、中でも歯科分野での普及は目覚ましいものがあります。
チタンのインプラントを土台にして人工歯を取りつけるのですから、しっかりと固定され、使える歯になります。
総義歯に代わる第二の入れ歯として期待されました。
そこで歯科医師は一斉にインプラント技術を習得しました。
このようにインプラントはたしかに素晴らしい技術ですが、保険がまったくきかず、しかも開発した会社のロイヤリティがかかっているために一本当たりの値段がかなり高いというのが現状です。
上下とも歯を失ってしまった人がインプラントにすると、高級車一台分程度の治療費がかかってしまいます。
総義歯は保険で作ることができるため、小型車一台分程度の出費でなんとかまかなえます。
たしかに歯は大切で、おいしく食事をとり、口元を気にすることなく皆とおしゃべりするためにはオールインプラントが理想です。
しかし、費用を考えると、すべての方がインプラントを選択できるとは限りません。
総義歯という選択肢は捨てられないのです。
費用面だけではありません。
最近は硬い食品が少なくなっているので、通常の食生活であれば、総義歯でまったく不便を感じません。
合っている稔義歯ならば日常生活にまったく問題は生じないのです。
しかし、現実を見ると、総義歯が合わなくて食事もできないという悩みを持っている方が大勢いらっしゃいます。
総義歯を入れた当初は合っていたのかもしれませんが、次第に合わなくなったり、あるいは最初から総義歯が簡単に外れてしまったり、合わなくて噛めない、炎症を起こして痛いという方もいます。
「そのうち慣れますよ」といわれて我慢している患者さんがどれだけ多いことか。
総義歯に対する苦痛と悩みをお持ちの方がこれだけいるのに、なぜ総義歯は合わないのか、その原因をわかっている方は少ないのです。
歯科分野においては、総義歯は大変難しい技術ですが、それだけに長い歴史があり、総義歯学という学問体系もできています。
人によって顔が違うように、人によって口の中の面積や構造、歯の形や生え方などがばらばらなので、総義歯は患者さんに合わせたフルオーダーメイドでなければなりません。
膨大なこれらの情報を、総義歯の理論に基づいて三次元的に作り上げていかなければならないのですから、簡単なことではありません。
しかし理論に基づいて作っていれば、噛めない、合わない総義歯になるはずがありません。
理論を無視したものだから噛めないのです。
しっかりとした理論に基づいて作られた入れ歯であれば、しっかり噛めますし、どこにも痛みを感じることなく、もちろん外れることはありません。
私はインプラントの有効性に早くから着目し、日本に導入された時期と同じ二五年以上前から研究と治療を実施しています。
臨床の現場で多くの患者さんを治療し、技術の開発を行い、学会で発表し、世の中に普及するように活動をしてきました。
インプラントの素晴らしさについては、実感はしています。
だからといって、藤義歯を否定するものではありません。
しっかりと噛める総義歯であれば、日常生活を送る分にはまったく問題ないからです。
インプラントを積極的に治療に取り入れている歯科医師の中には、総義歯を否定している方もいらっしゃいます。
インプラントは絶対で、総義歯は時代遅れのだめなものと決めつけ、患者に二者択一を迫ります。
こうして、大金を投じてインプラントにする方も大勢いると思います。
それで満足であればいいのですが、途中でインプラント体が抜けたり、炎症を起こす、あるいはインプラントでも噛めないのでやり直す、中には義歯に比べても見た目が悪いというケースさえあります。
何のためにインプラントにしたのかわかりません。
総義歯はその理論に基づいて適切に直せば、使える総義歯になります。
なぜ自分の総義歯は合わないのか、なぜ痛いのか、なぜ外れるのか、その理由を知り、理論に基づいて直せば必ず使い勝手のいい総義歯になるのです。
歯がなければ美味しく食事ができません。
家族や友達と楽しくおしゃべりすることもできません。
だからこそ、不幸にして歯を失ってしまった場合は、ご自分に一番合った方法で「第二の自分の歯」を手に入れていただきたいと思っています。
歯を失ったときの選択は、総義歯かインプラントかというのではなく、自分にとってはどちらが最適なのか、どんな技術なら使いやすい「歯」を手に入れることができるのか、まずは理論をしっかりと勉強していただきたいと思います。
まじめに総義歯が合わないからインプラントにするのではなく、なぜ合わないのか、その理由を知って、その上でどうするかを考えることが大切です。
歯というのは、人生を楽しむために不可欠なものですから。
歯を失うことは人生最大のリスク「二〇一〇年ショックLが原因で総義歯急増?歯科の世界で「二〇一〇年ショック」が起こるといったら、何事かと思う方が多いことでしょう。
日本は高齢化時代を迎えており、二〇一〇年には実に全人口の二三%が六五歳以上の高齢者になります。
六五歳は年金受給の開始年齢ですが、それに時期を合わせるように総義歯が急増する年齢でもあるのです。
五年に一度行われる厚生労働省の「歯の実態調査」では、二〇〇五年に八〇歳で自分の歯が二〇本以上残っている人の割合が二割を超えました。
一九九四年にスタートした八〇歳で二〇本の歯を残すことを目指す「8020」運動の目標が、五年も早く達成されたことになります。
全体としては喜ばしいことですが、ここに一つ問題があります。
五〇代まではほぼ一〇〇%の人が、自分の歯が二〇本以上残っていますが、六五歳から七〇歳の五年間に平均で十数本の歯を失っているのです。
インプラントを笑って続けよう!欲しいインプラントが欲しい所に来た感じです。
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